b19. Fox-1の145MHzダウンリンクの低仰角QSBについて!                                                          2018/3/24

 

最近 Fox-1シリーズ(AO-85,AO-91,AO-92)を使ってQSOすることが多くなっています。

このFox-1は小さなアンテナと簡単なシステムでQSOできます。
周波数は435MHzアップリンク/145MHzダウンリンクですが、小さいアンテナでも仰角10°あたりでQSOできる時があります。
145MHzのダウンリンクは6エレメントクロス八木の円偏波アンテナでも地上高3mで仰角0~30°ぐらいの間で大きなQSBを伴っています。
435MHzダウンリンクのSO-50などのFM衛星では経験していません。この145MHzのダウンリンクのQSBは何処からくるのでしょうか?。
アンテナの地上高3mでシミュレーションしました。(シミュレーションは周波数や高さで大きく変わる)
下図はアンテナの仰角(El)を変えた時の垂直面パターンをシミュレーションしたものです。
アンテナEl 0°(水平)では、El 9°付近に大きなピークが有ります。アンテナEl 10°でもEl 8.8°付近に大きなピークが有ります。

アンテナEl 17°ではEl 17°付近に大きな落ち込みが有ります。アンテナEl 25°以上では大きな落ち込みは無くなっています。

これらは大地反射の影響のためだと思われます。周波数が低くアンテナ高度が低いと大きなピークや落ち込みが出ます。

 

 

周波数が高くアンテナ高度が高い場合はピークや落ち込みの大きさは変わりませんがローブが細く細かくなります。(最下図参照)

またアンテナゲインが低いアンテナほど広範囲で大地の影響を受けます。
ただしこのシミュレーションは大地を完全な平面として計算しています。

実際には周囲には大地の凸凹や建物や障害物が有ります。電波は大地だけでなくてそれらの建物、凸凹や障害物により反射します。

従って実際に衛星から電波を受けるともっと細かく信号が上下します。

また電波の変調方式によっても変わってきます。AMやSSMは比較的ゆっくりしたAGCが掛かっていますので大きなピークや落ち込みを感じなくしています。

しかし本来FMはゲインを飽和させて使いますが衛星通信の場合はリニアな部分(ノイズが有る部分)も使いますので、その信号の変化は非常に大きくなっています。

全体的にはシミュレーションのように大きく変化すると思います。

なお、アンテナゲインは低仰角ほど大地反射が加算されて大きくなっています。本来6エレメントクロス八木(円偏波)の自由空間のゲインは10.61dBiですが上図のEl 0°では16.38dBiと5.77dBも大きくなっています。El 25°では14.34dBiと少なくなっています。
6エレメントクロス八木(円偏波)、地上高3mの場合は、El 10°付近で一旦強くなり、El 17°付近で大きく落ち込み、El 25°以上では大きな変化は無くなることが分かります。

従って、アンテナの仰角の145MHzのQSBは大地反射によるもので、偏波の違いによって出るものでは無いと推測しています。
当局の西から北方向は100mぐらいほぼ平坦な畑が続いています。小さな変動は有りますがほぼシミュレーションに近い変化をします。

しかしその他の方向は主に2階建ての家が有り複雑に変化していますが、El 25°以上では大地反射の影響はほぼ無くなる感じです。
なお、145MHzのアンテナを地上高15m以上にすれば El 0~25°の変化は感じなくなるのではないかと思います。

145MHz,15mHと435MHz,5mHを比較したら同じパターンになりました。(下図,周波数3倍,地上高1/3が同じ)
145MHzの低仰角における落ち込みを無くすには、出来るだけゲインの高いアンテナにしてビームを鋭くして、アンテナの地上高を高くして大地反射の影響を無くすことが必要です。
なお我々アマチュアは低ゲイン低地上高のアンテナで出来るだけ大地反射を使いそのピークを捕まえてQSOすることで良いのでないかと思っています。
本来は衛星通信とは「安定した通信」を望みますが、衛星を使ったQSOは「合理的な不安定を作り出し、それを解決して一瞬でQSOをする」ことも有って良いと思っています。

 

 

145MHz,15mHと435MHz,5mHを比較したら同じパターンになった。

 

 

 

 

                     

 

 

  ↑:145MHz、15mH。      ↑:435MHz、5mH                            

 

Fox-1シリーズの周波数関係                      アップリンク周波数   ダウンリンク周波数                          衛星通信に必ず出て来るドップラー

                                                                  (送信,トーン67Hz)       (受信,スケルチオープン)        シフトは考える必要はありません。 

                  AO-85:   435.180MHz                 145.980MHz            衛星にAFCが入っていてドップラー 

                                                     AO-91:     435.250MHz                 145.960MHz                   シフトを補正しています。 

                                                     AO-92:     435.350MHz                 145.880MHz          送受信共に左記の周波数に固定して

                                                  運用できます。 

                                                                                                                                                       

                                                              おわり