b21. アンテナ調整用同軸ケーブルの作り方(1/2λ電気長✕整数倍)                    2018/10/15

 

注)アンテナ・アナライザー等に「校正」の機能がある場合は、「校正」すれば以下の操作は不要である。

アンテナを作ってSWRなどを調整する時は,測定に使う同軸ケーブルは,1/2λ電気長の整数倍の長さにしてアナライザー等で測定する必要がある。

 1.  なぜ 1/2λ電気長の整数倍の長さにして測定する必要があるのか?

 2.  1/2λ電気長の整数倍の同軸ケーブルは,どうやって作るのか?

この2つについて説明する。

1.  なぜか?

左図は3.22mの2D-LFB-S(50Ω)同軸ケーブルの片側にN-Pコネクターを付けてアンテナ・アナライザーに接続し,

もう一方端はオープン(開放)にして,周波数を37114kHz±37114kHzにしてアンテナ・アナライザーでRXを測定した図である。(R:抵抗成分、X:リアクタンス)

抵抗成分は 1/2λ, 1λ で200Ω以上(無限大)となっている。

『 この図の1/4λは,同軸ケーブル長が一定なので0と37114kHzの中間の周波数(18557kHzの1/4λ=300/18.557/4

=4.04m,この4.04m✕短縮率=3.22mとなる 』(ここでの短縮率は,3.22/4.04=0.797となった)

リアクタンスは 1/4λ, 1/2λ, 3/4λ, 1λ, で0となった。

1/2λ, 1λ (1/2λ電気長の整数倍)では先端が開放なので,先端のインピーダンスは正しく無限大(200Ω以上)と表示されている。⇐A図 (図をクリック拡大)

           B図↑先端に50Ω接続       C図↑先端に25Ω接続      D図↑先端に100Ω接続       E図↑先端をショート

B図は先端に50Ωを接続して測定したもので,周波数や波長に対する長さに関係なく50Ωと測定されている。(SWRはほぼ1と表示される)

C図は先端に25Ωを接続して測定したもので,1/2λ,1λの周波数では25Ωになっているが,1/4λ,3/4λの周波数では50Ωの2倍の100Ωと測定されて

 いる。(SWRはほぼ2と表示される)

D図は先端に100Ωを接続して測定したもので,1/2λ,1λの周波数では100Ωになっているが,1/4λ,3/4λの周波数では50Ωの1/2倍の25Ωと測定さ

 れている。(SWRはほぼ2と表示される)

E図は先端をショートして測定したもので1/2λ,1λの周波数では0Ωになっているが,1/4λ,3/4λの周波数では無限大(200Ω以上)と測定されている。

『 SWR計だけでアンテナ調整すると,50Ωより高い場合と低い場合の区別ができない。SWR計では25Ωと100Ωが同じSWR2と表示される 』

1/2λ, 1λ (1/2λ電気長の整数倍)では先端の負荷を正しく測定されているが, 1/4λ, 3/4λ では50Ω比の逆数で表示される。(50Ωの半分の25Ωが50Ωの2倍の値(100Ω)と表示される)

 

なお,上図は抵抗成分だけの負荷で測定しているが,実際のアンテナではリアクタンス成分もあって1/4λ,3/4λ付近ではより複雑に表示される。

以上の理由でアンテナ調整用同軸ケーブルの長さは測定周波数の1/2λ電気長の整数倍にする必要が有る。

メーカー製アンテナなどの50Ωに調整されているアンテナのSWRを測定する場合の同軸ケーブルは任意長でもそれほど大きな違いはない。

注)電気長は下記で説明する。

 

2. どうやって作るのか? (周波数によっても短縮率が変わるようで、できるだけ使用する周波数付近で測定してください。コネクター部分、先端部分の剥きしろが影響している)

1/2λ電気長の整数倍の長さとは?

1/2λは(300/周波数(MHz)/2)と単純に計算できる。(436.5MHzの例:300/436.5/2=0.343642611m)

電気長とは?、同軸ケーブルの中を高周波電流が流れると空間を流れる(電波が進む)より遅くなる。

従って,その遅くなる分を短くして補うことにしている。その短くする分を短縮率として、0.8123倍とか0.7234倍とか表している。

この短縮率は同軸ケーブルのメーカーや型番によって少しずつ違いが有り,メーカーのカタログで表示していない場合もある。

従ってこの係数を測定して求める必要が有る。

・作り方、その1

左図は5.07mの2D-LFB-S(50Ω)同軸ケーブルの片側にN-Pコネクターを付けて

アンテナ・アナライザーに接続し,もう一方端はオープン(開放)にして,周波数を23.00MHz±24.00MHzにしてアンテナ・アナライザーでRXを測定した。

(R:抵抗成分、X:リアクタンス)

1λの周波数は23.0MHzの2倍の46.0MHzになるので、1波長の長さは、左図より、300/46=6.52173913m となる。

実際の同軸ケーブルの長さが5.07mなので、

5.07/6.52173913=0.7774 ∴短縮率:0.7774となる。

アンテナを調整する時は約1λ以上離れて測定する必要が有るので,145MHzは約2mなので余裕を見て約3m長とする。145MHz帯と435MHz帯は周波数が3倍(整数倍)の関係になるので兼用する。

145.9MHz: 300/145.9/2✕0.7774✕n≒3m とすると。

A=(300/145.9/2)✕0.7774✕4=3.196m  (n=4)

436.5MHz:300/436.5/2✕0.7774✕n≒3m とすると。

B=(300/145.9/2)✕0.7774✕12=3.205m  (n=12)

長い方の3.205mに先端の半田付け部分を20mm程度プラスして、

全長:3.225m する。ただし,この長さはコネクターを含めている。

                               先端部は,芯線+銅線部を6+6=12mm程度にする。

・作り方、その2

一般的に我々が良く使う1.5D~10D-FBの短縮率は0.67~0.8の範囲になっている。

1/2λ✕0.82=1/2λ電気長とし+20~50mmを先端の剥きしろにして、先端開放でアナライザーで測ってインピーダンスが最大になるようにカット&トライすれば良い。(0.8を0.82としたのは,長めにしてカット&トライするため)

145MHzの例:L=300/145/2=1.03448m、  L✕0.82✕n+20mm、1035✕0.82✕4+20=3.415m (N=4)、これを片側にN-P(M-P)コネクターを付けて反対側を開放にして芯線と編組を必要な長さ(10~20mm程度)にして145MHzの必要周波数でアナライザーで測定し、インピーダンスが最大になるようにカット&トライすれば良い。

 

注)

①この1/2λ電気長の測定基準点はアナライザー内部の測定点になるのでAアナライザーで作ったものをBアナライザーで測定すると違ってくる場合がある。さらに変換コネクター等を使うとその分が同軸ケーブル長に加算される。(短く切りすぎて,もう少し長くしたいときには,中継コネクター等で長くしても良い。うら技?)

② 単にSWRだけを測定する場合は,1/2λ電気長の整数倍の長さにしなくても大きな違いはない。

③ R,Xを正確に測定してアンテナインピーダンス調整をする場合は,抵抗成分最大周波数±<1%以下が望ましい。

④ 低い周波数(HF帯)で短縮率を測定して高い周波数(UHF帯)に適用すると誤差が大きくなることが有る。(ケーブル長は10λ以内ぐらい)

 

                                                            おわり